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2010-09-10 [小説]

ダスト チャールズ・ペレグリーノ 読了
先日、ザ・ロードを鑑賞した際、米国の終末観がどのように変異したのかと話題になりまして。
その際に薦められたのが本作でした。
一昔前の米国の終末後ものといえば、核戦争が勃発。一面荒れ果てた荒野となり、放射能で突然変異を起こした
生物と戦いながら、謎の無線の発生源をたどっていくと・・・そこは明るい日差しの中、樹木が生い茂り、
平和でやさしい人々がたくさんくらしてましたと・・・・べ、別に世界が燃えつきる日のことをいってるんじゃないんだからねっ!
その後は、マッドマックス的なヒャッハーな世界観に移りと・・・この辺の大本はハインラインの自由未来が大本になるのか?
なんにしても、アメリカという国家は消滅してしまったというのは、基本として存在するようですが、
その過程が最近は変化してしまったようです。
ザ・ロードは世界が滅びた理由は明らかになってませんが、このダストという作品はそれを補完できるのでは?
ということで薦められたわけです。

結論を言うと中々にエキサイティングで興味深い物語でした。
冒頭は表題にあるダスト、埃のように見える存在によって人が襲われ、わずかな時間で白骨化する事件がおこります。
この辺、過去の生物がなんらかの理由で復活して人類に猛威を振るい始めたと、安直に考えたわけですが・・・
実はこの埃、異常発生した普通のダニ。それがある理由で異常繁殖の過程で肉食に変化したというもでした。
丁度、中国で殺人ダニ発生のニュースがあったりして、ちょっと背筋が冷たくなったのは内緒ですよ。
そしてインドではある種の菌類の異常増殖により農作物が全滅。菌類に侵食されていない土地を求めて武力侵攻を開始。
ある島では狂牛病に感染したチスイコウモリが凶暴化、吸血対象を牛から人へと移し始めました。
物語は主人公一家の住む場所が埃に襲われた日を第一日目としてますが、インドなどの例から異変はずっと前からはじまっていたのでしょうね。

読感はずばり復活の日です。圧倒的な情報量とそれを分析、原因を推論し対策を検討する。
でも、普通の人々は徐々にパニックに陥り、経済と流通が崩壊し始めるわけですね。
実際、米国の場合、埃によっておきた被害は地域としては限定されているんですけど。
さらに徐々に連絡が途絶する地域が発生し始め・・・
この辺は実にはらはらします。ただ、何故かロシアが特に行動を起こしている描写がなく、中国が大規模な南下を行っているあたり、先見の明があるのかな?
このような考察面は面白いのですが、逆に人物描写が弱いのが残念かな?
登場人物が多すぎる上に、扱いが雑というか、なぜにこのような形で登場し、かつ退場したのかわからない人もします。
主人公と敵対するラジオホストも今ひとつ説明不足なのが気になります。まぁ雰囲気で理解できますが。
本当はあれ、ラジオのパーソナリティって言うよりも、宗教番組の人のなんでしょうねぇ。

個人的にタイトルはダストではなく、新約とした方がよかったのではと思うんですよね。
作中でも埃は数々の災害のひとつでしかないですし。
で、この世界の延長にザ・ロードで描かれた世界がある可能性も十分にあると思うんですよね。
この物語では作物が大打撃を受け、短期間で人類が餓死してしまうと予測されてますし。
そして、この物語の一番の肝は、作中で描かれた滅びですら前哨にすぎないということで・・・かなり後味が悪いんですよねえ。
まっ個人的には止めに、原油を駄目にしてしまう微生物も登場させればよかったのではと思ってましたが。
なんにしても中々に面白かったです。というか、これだけの話、10年以上昔に書かれているのがすごい。
・・・だから、終末世界でも世界貿易センターが残ってるというのは・・・(^^;
後、グリセリンの結晶化とシンクロニティの件は肯定しているのは、翻訳者の誤訳と思いたいけど・・・
うーん、ちょっと胡散臭くなっちゃうんですよねぇ。

ダスト

ダスト

  • 作者: チャールズ ペレグリーノ
  • 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本


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